【NBA解析-3ポイント】驚異のシュート科学 ― ステフィン・カリーの30フィート超スリー

バスケットボールの歴史を語るうえで、ステフィン・カリーほど「シュートの常識」を変えた選手はいません。
ESPNの人気コーナー「Sports Science」では、カリーの超ロングレンジシュートを科学的に分析。その驚異的な精度の秘密が数字で明らかになりました。以下がESPNのスポーツサイエンスのYoutube動画になります。2017年11月19日に公開された動画です。かなり古い動画ですが、カリーの凄さを科学で紐解く、魅力的な動画です。

30フィートとは? ― 通常のスリーポイントとの比較

30フィートいう、今回のカリーのスリーポイント距離の簡単な説明です。

  • 30フィート = 約9.1メートル
  • NBAの通常スリーポイントラインはコートの位置によって異なりますが、
  • コーナー付近:約22フィート(約6.7メートル)
  • アーク中央:約23.75フィート(約7.2メートル)
  • つまり、30フィートは通常のスリーよりも約6〜7フィート(約1.8〜2.1メートル)遠い距離です。

30フィート(約9.1m)からのシュートでは、左右の誤差許容範囲が約21%縮まります。つまりリリースがほんの 0.125インチ(約3ミリ) ずれるだけで、ボールはリングの中心から 約25センチ(10インチ) 外れてしまうのです。
普通の選手ならリスクが高すぎて撃てない距離。しかし、カリーにとっては日常。ここがまず異次元です。

ステフィン・カリーが30フィート(約9.1m)からシュートを放つ瞬間。手元のわずか3mmのズレが、リングで約25cmの誤差になることを示す図解付き。
カリーが30フィート超スリーをリリースする瞬間。手元のわずか3mmのズレが、リングで約25cmの誤差になるというシュートの難しさを視覚的に示しています。

遠距離シュートを成功させるには、ボールをより速く放つ必要があります。30フィートからのシュートでは、スリーポイントライン付近に比べて 16%速いリリース が求められます。
それでもフォームを崩さないのがカリーのすごさ。速さと正確さを同時に成立させることで、驚異的な決定力を発揮しています。

ステフィン・カリーがシュートモーションで膝を曲げる瞬間。膝の角度は115度で、安定したフォームを維持している様子。
カリーはシュート時、膝を115度に保つことでフォームの安定性を確保。他の選手のように余分に膝を曲げず、正確なリリースを可能にしています。

多くのNBA選手は距離を伸ばすと、膝を25度ほど余分に曲げてジャンプの力を借ります。ところがこれはフォームやタイミングを乱し、シュートミスの原因になりがちです。実際、リリース速度のばらつきはシュートミス全体の65%を占めています。
一方カリーは、どの距離でも ひざの角度は常に115度。フォームを変えず、安定性を最大化しているのです。

カリーの手首のスナップは、毎秒3,000度という驚異的なスピード。理論上、人の手首は 160〜180度ほど 動かせますが、シュート動作の中ではそこまで大きく動かす余裕はありません。実際に使うのはその一部、例えば90度ほどです。
つまり、カリーは 90度をわずか0.03秒 で切り終えるスピードでリリースしているのです。

リリーススピードはわずか0.03秒。人がまばたきする時間のさらに3分の1という、理解を超えた速さだ。その一瞬でカリーの手首から放たれたボールは、3ポイントの弾道を描き、試合を決める。

今シーズン、カリーは 30フィート以上のスリーポイント成功数で、なんとリーグ全チームを上回る 数字を叩き出しました。しかも、他の選手で複数本決めた者は一人もいません。
数字が雄弁に物語るとおり、カリーのシュートはただのスキルではなく、科学と芸術の融合といえるでしょう。

数字で解析されると、カリーの凄さが「体感」から「理解」に変わりますよね。
普通ならリスクだらけの30フィート超のシュートを、彼はほぼ同じフォーム・同じタイミングで打ち続けている。まさに「規格外の安定感」です。

次に試合を観るときは、ぜひ彼の「0.03秒の手首」に注目してみてください。その一瞬に、NBAのゲームを変える魔法が詰まっています。

ステフィン・カリーがシュートの構えをしている瞬間、30フィート超スリーに挑む姿

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