NBAトップクラスのボールハンドラーの科学的解析

この記事では、NBAプレイヤー「カイリー・アービング」の卓越したドリブルムーブと瞬時に相手を抜き去る爆発的なスピードを取り上げます。
今回のESPNのスポーツサイエンスチームの動画では、カイリーをテクノロジーを駆使し分析しています。この動画は2017年のものなので、所属チームはクリーブランド・キャバリアーズとなります。古い動画ですが、カイリーの身体能力とドリブラーとしての才能の高さを感じられると思います。
カイリーのドリブルムーブは華がありますよね。本人の努力と才能があのボールハンドリングを可能にしているんでしょうね。では、カイリー・アービングの驚きのスピードの解析をご堪能ください。
【動画】カイリーの驚異的な速さースポーツ科学
カイリー・アービングがなぜNBAで最も危険なボールハンドラーの一人なのか、その秘密に迫るべく、キャブスの練習施設に機材を持ち込み、NBAオールスタープレイヤーに対し科学の力を借りて計測を行った動画です。
カイリーが語る「自分らしさ」
「あなたが他の選手と違う点は何だと思いますか?」という問いに、カイリーはこう答えています。 「最初の一歩から一気に加速してバスケットに向かえること、それか逆に引いてジャンプシュートに持ち込めること。その“加速と減速”の組み合わせが、自分のプレースタイルをちょっと特別なものにしてると思う。」
科学が解き明かす、カイリーの「驚異のスピード」
【驚異の数値】時速19.3km&1.5秒
様々な動きをテストした結果、ワイヤレスモーション追跡センサーのデータから驚くべき事実が判明しました。
- カイリーはたった2歩で時速約19kmまで加速している。
- スリーポイントラインから静止した状態でも、わずか1.5秒でリムまで到達できます。これは一般的なNBAのポイントガードより約15%も速いんです。
アメリカはキロメートルではなく、マイルで距離を表すため動画内では時速12マイルとなっています。この時速12マイルをキロメートルに変換すると時速19kmとなる訳です。個人的にはこの数値は、あまりピンときませんでした。時速19kmと聞くとあまり速く感じませんよね。どうでしょうか?
しかし、調べてみるとこの時速19kmという数値は、人間にとっては「かなり速い」、いやトンデモない速さなんです。
2歩で時速19kmを掘り下げてみよう
ただ単に時速19kmというスピードだけをランニングで比較すると、下の表のような感じになります。本気のランニングよりも速いスピードということで、時速19kmはかなり速いようです。(※ウサイン・ボルトのデータは無視してください。ネタみたいなもんです。)
活動・人物 | 速度(km/h) | 説明 |
---|---|---|
普通の歩行 | 約4〜5 km/h | のんびり歩く速さ |
速歩(パワーウォーク) | 約6〜7 km/h | 早歩きの運動 |
軽いジョギング | 約8〜10 km/h | 息が上がる程度 |
本気のランニング(一般人) | 約12〜16 km/h | フィットネスランナーの本気 |
時速19 km/h | かなり速い! | 短距離走のペースに近い |
ウサイン・ボルト(最高速) | 約44 km/h | 100m走の最高速度 |
「まぁ、本気のランニングよりも速いけど、ランニング程度か」などと、思ってはいけません。
たった2歩で、時速19kmまで加速は「驚異的」なクイックネス
なぜ「驚異的」なのか?
- 時速19km = 毎秒 約5.3メートルーつまり、2歩で秒速5.3mに到達するということ。
静止状態からほんの数歩で、ほとんど全力疾走に近い速度に達していることを意味します。これは、瞬間的な爆発力と体の使い方が尋常ではない証拠です。2歩でこの速度に達するのは一般人ではまず不可能(普通の人は4〜5歩以上かけてようやくその速度に達する)との事。一瞬で時速19km出せるのは、スプリンターなどのトップアスリートクラスの加速性能なんです。
達成距離 | 速度 | 備考 |
---|---|---|
2歩で5.3 m/s(=時速19km) | 超優秀 | スプリンター・俊足アスリート |
3〜4歩 | 良好 | 競技経験者・鍛えてる人 |
5歩以上 | 普通 | 一般的な成人男性 |
2歩で19km/hというのは、単なる直線スプリントではなく、試合中のごく短い距離で爆発的にスピードを出せることを意味します。試合中にドリブルをしながら、瞬時にこの爆発的なスピードを出せるカイリー・アービングは、恐ろしいプレイヤーです。
一般的なNBAのポイントガードより約15%も速いというデータから、なんとなく「速い」という印象を受けますが、NBAの選手は、世界トップクラスの身体能力を持つアスリートたちです。その彼らの中でも、カイリー・アービングの瞬間的な加速力が飛び抜けている、ということなんです。あらためて凄さが分かります。
静止状態から1.5秒で3ポイントラインからリムに到達
この驚異的な加速でわずか1.5秒で3ポイントラインからリムまで到達してしまう。しかも、加速・減速・切り返しのスピードが群を抜いている選手ですからディフェンダーは嫌でしょうね。一瞬のズレでディフェンダーを置き去りにするのは、憧れます。短距離スプリンター並みの加速性能を持ちつつ、歴代トップクラスのボールハンドラーって本当に凄いですね。
反応速度「0.2秒」を巧みに操る、カイリーのスキル
VISUAL REACTION TIME 0.2SEC
前述の驚異的な加速力は非常に有効な能力であることは間違いない、しかし、カイリーの真の危険性は、ディフェンダーの「相手の反応時間を読み切る力」つまり「メンタル・クロノメトリー」を本能的に理解していることにあります。
クロスオーバー前、彼はわざとボールを約0.25秒間さらします。
これは、人間が視覚的な刺激に反応するのにかかる約0.2秒とほぼ同じ。
つまり、相手が「今反応しなきゃ」と思うタイミングを正確に突いているのです。
このとき、相手ディフェンダーの体重が片足に約60%乗った瞬間に、
カイリーはボールを背後に回し、時速約21マイル(約34km)で振り抜きます。
これにより、カイリーはわずか0.35秒でディフェンダーと約1.5メートルのスペースを作る事ができます。本当に凄いプレイヤーです。
マサカリテクノのコメント
2017年の動画でしたが、カイリー・アービングの運動能力が科学的に分析されることで、彼のプレーの凄さが数字として理解できるのはとても興味深かったです。2歩で時速19kmに到達するという加速力は驚異的で、まさにNBAトップレベルの爆発力を証明しています。
さらに、彼が意図的にボールを見せてディフェンダーの反応時間を操作しているという話には驚かされました。単なる身体能力だけでなく、相手の心理やタイミングを読んだプレーが、彼の「アンストッパブルなドリブル」を支えているのだと実感しました。
こうしたデータに裏付けられたスキルの積み重ねこそが、アービングを唯一無二の存在にしていると感じます。スポーツを感覚だけでなく科学で語ることの面白さを再認識できた動画でした。