今回は2017年6月28日公開の動画、ESPNのSports Science「The Science Behind The Greek Freak’s Skills」を取り上げてみた。
NBAの中でも“人間離れした身体構造”を持つ男、ヤニス・アデトクンポ(Giannis Antetokounmpo)の驚異的な身体能力とプレーメイカーとしての特性が数値と動きの両面から解剖されています。
本記事では、当時の科学的分析をベースに、2025年現在の最新データとエピソードを加えながら、ヤニスの“跳躍力=構造力”を紐解いていく。
➤NBAセンター級のサイズと“動ける巨人”

ヤニス・アデトクンボの進化を探る
ヤニスは身長6フィート11インチ(約211cm)、ウィングスパン7フィート3インチ(約221cm)というNBAセンター級のサイズを持つ。2016-17シーズン当時に投稿された今回の分析動画では、センター級の彼のサイズや身体能力が「規格外」として注目されていました。

ヤニス・アンテトクンポのサイズ
- 身長:6フィート11インチ(約211cm)
- ウィングスパン:7フィート3インチ(約221cm)
NBAのセンタープレイヤーの平均サイズ
- 身長:6フィート11インチ(約211cm)
- ウィングスパン:7フィート4インチ(約223.5cm)
そこから約8年が経ち、2025年現在も身長とウィングスパンのサイズは変わっていないが、体重は約110kgに増加。筋量と耐久性が強化され、“動ける巨人”としての完成度がさらに高まっている。
「サイズは武器だが、動けなければ意味がない。ヤニスはその両方を持っている」— Sports Science
高身長プレイヤーで唯一の“アシスト能力”

6フィート10インチ以上の選手でのアシスト
動画では「6’10’’以上の選手で、1試合平均5アシストを記録している唯一の存在」と紹介されていました。実際、2016-17シーズンのスタッツは平均5.4アシスト。
- ヤニス・アンテトクンポ 5.6 アシスト/試合
- アル・ホーフォード 4.9 アシスト/試合
- ブレイク・グリフィン 4.7 アシスト/試合
そこから現在にかけて、ヤニスのプレーメイキング能力はさらに成長。2024-25シーズンでは平均6.5アシストを記録しており、得点力とともに味方を活かす力も兼ね備えた「オールラウンダー」へと進化しました。サイズと視野を併せ持つプレーメイカーは、今なおNBA史上でも稀有な存在です。
驚異のストライドでコートを制圧
ヤニス・アデトクンポは、そのサイズゆえにドリブルという動作においては不利な構造を抱えている。
身長6’11(約211cm)の彼がドリブルする際、ボールは通常のポイントガード(6’3=約190cm)よりも約40%遠い位置にあり、1回のドリブルにかかる時間もヤニスは0.28秒、PG平均は0.20秒と、テンポ面でも劣る。

この比較は、上記の画像でも明示されており、「サイズ=優位」ではなく、「サイズ=制約」になる場面があることを示している。
➤驚きのストライドとスピードを生かしたプレイメイカー
ヤニスは、上記で示した通り、ドリブルという部分において物理的不利を被っている。しかし、ヤニスのもつ体格と身体能力がもたらす“ストライドの長さ”と“ドリブル回数の最適化”によって克服している。

彼の歩幅はなんと8.8フィート(約268.22cm)に達し(※動画では、実際の「バックス(鹿)」の体長236.22cmよりも長いと表現している)、さらに時速17マイル(時速27km)でコート半面を1ドリブルで突破可能。つまり、細かく速くドリブルするのではなく、少ないドリブルで広範囲を一気に制圧する戦略を取っているのだ。1フィート=30.48cmで換算。鹿との比較は無理やりで笑える。
➤COAST TO COAST=10ストライド(10歩)

「coast to coast(コースト・トゥ・コースト)」は、バスケットボール用語で、ディフェンスリバウンドやスティールから自陣の端(ベースライン)から相手陣の端まで、ボールを保持したまま一気に駆け抜けて得点するプレーを指します。
「ヤニスは、リバウンドからわずか10歩で‘coast to coast’を完了する。これは、ストライドと跳躍力が融合した“移動力の怪物”であることの証明だ。」ちなみに、NBAプレイヤーの平均歩数は13歩という事で、3歩ほど少ない歩数でヤニスはコートを駆け抜けることができる。
2025年夏にはギリシャの“初ダンクのコート”を訪れ、IShowSpeedにその歩幅を実演。コースト・トゥ・コーストを10歩で完了する異常な移動力は、今も健在。
ほぼブロック不可能な、ジャンプショット
“Greek Freak”の体格が成せる、特異なジャンプショット
この“Greek Freak”の異様な体格は、彼のジャンプショットをほぼブロック不可能にしています。例えば、ニックス戦での決勝シュートでは、彼はステップバックで約1.2m(4フィート)のスペースを作り出し、その動作はわずか0.45秒。そしてボールを47度の角度でリリースし、そのリリースポイントは床から約10フィート4インチ(約3.15m)の高さに達しました。

- ステップバックによるスペース創出
(0.45秒で1.2mのスペースを確保) - 高いリリースポイント
(打点は床から約3.15mもの高さ)
この、2つの一連の動作によってブロックショットを不可能にする。シンプルだがヤニスだけのシグネチャームーブといっていいだろう。
実際、2016-17シーズンのFG成功率は52.1%でしたが、2024-25シーズンは60.1%まで向上。体格強化と技術向上が合わさり、効率的に得点を重ねられるようになった結果といえます。特にポストアップやドライブからのフィニッシュの安定感は、当時より数段階上のレベルに到達しました。
レオナルド・ダ・ヴィンチ?!
尋常ならざる、手のサイズ
動画の最後には、レオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」と比較するユニークな視点も紹介されました。ヤニスの手の大きさ(約12インチ)は、本来なら身長10フィートの人物に相応しいサイズだと説明され、彼の身体能力の異常さを象徴するものとして扱われました。
この「規格外の手の大きさ」は、ボールハンドリングやダンク力にも大きく影響。2025年現在もその特徴は健在で、ギリシャ代表として出場したユーロバスケット2025でも、まさに「人間離れした存在」として大活躍しました。
まとめ
2016-17シーズンの分析動画で語られていたヤニス・アデトクンボの身体能力とスキル。その多くは2025年の今でも健在であり、さらに進化を遂げています。
- サイズやウィングスパンは変わらないが、体重増加=筋力強化により接触プレーに強くなった
- アシスト力が向上し、オールラウンダーとしての地位を確立
- ストライドとスピードに筋力が加わり、止められない存在へ進化
- シューティング効率も改善し、効率的なスコアラーに
- 規格外の身体能力は、今なお「人類の枠を超えた存在」と評される
📺 参考動画:ESPN Sports Science 「Giannis Antetokounmpo」(2017/06/28公開)
📊 出典:Basketball-Reference (2016-17, 2024-25シーズン成績データ)